【田植え完全ガイド】兼業農家向けの手順や田植え機の回り方を解説!病害虫対策やコツも紹介!
- 兼業農家の田植えの基本と手順
- 効率的な田植え機の回り方
- 田植え後に注意すべき病害虫対策のコツ
田起こし・代掻きとやってきて、次の田植えで大きな失敗はしたくないですよね。
田植えをしないとお米ができないので、もちろん重要な作業です。
この記事では、田植えに関する基本から具体的な手順、ポイントを押さえた田植えの回り方、そして病害虫対策まで、分かりやすく解説していきます。
この記事を読み進めることで、田植えに必要な知識と技術を身につけ、安心して田植えができるようになるはずです。
それでは、いきましょう!
田植えで大事なのは、後のことを考えておくこと!
田植えにおいて何が重要になってくるかというと…
- 田んぼの土をなるべく平らのままにすること
- 稲刈りをするときに苦労しないようにすること
大まかに言うとこの2点です。
田植えは後でやり直しができないからこそ、ポイントを押さえておく必要があります。
この重要な2点を意識して、田植えを計画・実行していきましょう!
まずは、田植えの基本と大前提から解説します。
田植えとは、稲の苗を水田に植える作業
田植えは、お米の元になる稲の苗を田んぼに植えていく作業です。
ほとんどの農家は田植え機を使って水田に稲の苗を植えていますね。
棚田など特殊な場所は手で植えるところもありますね。
田植え機の登場・性能向上により、田植えを少数の人で行えるようになっています。
僕も兼業農家として田植え機を使い、2~3人で田植えをしています。
田植え機は均一に苗を植えることができ、僕にとっては必須の農機具です。
ここでは田植え機を使った田植えの方法を解説していきます。
田植えをするための準備・計画
稲を育てるうえで、田植えの事前準備の手を抜くことはできません。
準備の手を抜くと、後々の作業が大変になり、苗の成長にも悪影響を及ぼす可能性があるんです。
ここでは、田んぼの準備と苗について解説していきましょう!
田んぼの準備(田起こし、代掻き)
田植えを行うよりもっと前に、まず田んぼを耕し、その後に代掻きをする必要があります。
田起こし
秋・冬・春の3回で田起こしができるとベストです。
最低でも1回、春の5月だけでも田起こしをしておきましょう。
田起こしをすることで、土の中の環境を整い、柔らかい土の上に苗が根を張りやすくするためです。
代掻き
代掻きは、田起こし後の田んぼに水を入れてかき混ぜる作業です。
代掻きのタイミングは、田植えの1週間~2日前に済ませます。
代掻きをしなくては、田起こしをしていても苗が上手に植えられません。
代掻き後の土は、稲の赤ちゃんである苗を育てるためのベッドみたいなものです。
この代掻きを丁寧にすることで、稲は元気に育つことができます。
稲の苗の予約・購入
兼業農家の方はほとんどの場合、農協か苗屋から苗を購入していると思います。
一方で、苗ではなく稲の種から用意する場合は、2月頃から育てなくてはいけないので大変ですよね。
苗から育てる専業農家さんはスゴイです。
田植えの当日に、事前連絡もなく農協や苗屋に行っても苗がもらえない可能性があります。
必ず事前に、苗の購入数量と引き取り日を伝えておくようにしましょう。
苗の数量の把握
田んぼは1反の広さで、苗箱が20枚あれば十分とされています。
1反:約1,000㎡(20m×50m、テニスコートなら約4面分)
なので、まずはあなたの田んぼの広さを確認しておきましょう。
それから、いくつ苗箱が必要になるか計算しておくといいですね!
病害虫対策の農薬(箱施用剤)を用意
箱施用剤を呼ばれる農薬を、田植え直前の苗箱に振り、水をかけます。
そうすることで、田植え後の稲が有効成分を吸収し、ウンカなどの病害虫に稲を食べられないようにしています。
有効成分は、長期残留しないため、米そのものには影響ありません。
ただ、長期残留しないということは、効果が長続きしないとも言えます。
ウンカの飛来・発生が少なければ、箱施用剤だけで十分に防除できます。
同時に撒く肥料を用意しておく
多くの田植え機は、苗を植えると同時に肥料を撒くことができます。
そのため、田植え前に肥料を用意しておきましょう。
一発肥料と呼ばれるタイプであれば、肥料を撒くのは田植え時の1回のみで済みます。
なぜなら一発肥料は、稲の生長タイミングに合わせて溶け出すようにできており、肥料を追加する必要が無いからです。
よくできてますよね!肥料の手間が減るので、とてもありがたいです。
稲の生長具合や環境にもよりますが、ぜひ検討してみてください。
田植えの時期とタイミング
田植えの時期は一般的に5月~6月頃が目安です。
ただ、地域や品種によって時期は違いがあります。
なので、近隣の農家さんにいつ頃に田植えをするのか聞くと間違いないですね。
その他にも次の2点も含めて田植えの時期を考えなくてはいけません。
- 水利組合の予定では用水路の水が使えるのはいつ頃なのか
- 本業の仕事が休みの日に田植えができるのか
それぞれ説明していきます。
水利組合の予定では用水路の水が使えるのはいつ頃なのか
田植え時期になると用水路に水が多くなりますよね。
水利組合が川から水を引いてくることで用水路の水が多くなり、田植えができるようになっているんです。
そのため、水利組合が予定していない時期では、水が足りず、ほとんどの方は田植えができない状態になります。
いつ頃、用水路に水が流れるようになるのか、確認してからスケジュールを決めましょう!
本業の仕事が休みの日に田植えができるのか
時期がほぼ決まったら、代掻き・田植えの日程を考えていきます。
この時、あなたが本業の仕事をしている兼業農家なら、休みの日でないと代掻きも田植えもできません!
もし土日休みの場合なら、1週目の土日で代掻き、2週目の土日で田植えといった流れですると良いと思います。
ただ、仕事や休日の状況は人それぞれですので、それに合わせて日程を決めなくてはいけません。
日が足りないなら、有給を取る必要だってあります。
僕は田植え・稲刈りで有給を取っています…っ!
休日の状況を考えて、田植えのスケジュールを計画しましょう!
田植えの天候は雨天決行、大雨は延期
田植えにおいて、多少の雨はさほど問題にはなりません。
理由は、田んぼが水に浸かっている状態での作業になるからです。
雨天時の田植えのデメリット
あえて雨のデメリットを挙げるとすれば、
- カッパや長靴などの雨具が必要
- 田植え機のマーカー線が見えにくい
- 田植え機で肥料などを撒く場合、肥料を濡らさない工夫が必要
などが考えられますが、決して不可能なことではありません。
手間は増えますが、田植えはできるので計画したスケジュールどおり進めましょう!
何より、せっかく計画したスケジュールが雨のせいでズレたら、たまったもんじゃありません!休みを返せ!って感じです。
大雨ではさすがに延期
悔しいですが残念なことに、大雨の場合は延期をお勧めします。
大雨ではさすがに、田植えの作業に次のような支障が出ます。
- 水が多すぎて苗が流される
- 畔がぬかるんでいてケガをする可能性がある
- 田んぼが見えにくく田植え機操作の難易度が上がる
満足に田植えができないリスクがあるため、その日の田植えは諦めましょう。
ケガなんてもってのほかです。
延期して、次の予定日こそしっかりと田植えを実行してやりましょう!
【当日】田植えをするまでの手順
田植え機を田んぼに持っていくだけでは、田植えはできません。
田植え当日に、まずは次の手順で準備をしていきます。
- 軽トラで苗を取りに行く
- 軽トラに肥料と農薬(箱施用剤)とレーキなどを積む
- 苗と肥料を田んぼの外に並べる
- 苗に農薬(箱施用剤)を撒く
- 田植え機に乗って田んぼに移動する
細かく分けましたが、全て別の作業なので、一つずつ説明していきましょう!
軽トラで苗を取りに行く
農協もしくは苗屋に注文していた苗を取りに行きます。
軽トラで乗り付けて、従業員の方に数を伝えると苗を積んでいってくれます。
その後は、家に戻ります。
軽トラに肥料と農薬(箱施用剤)とレーキなどを積む
家に戻ったら軽トラの空いているスペースに以下のものを積みましょう。
肥料、農薬(箱施用剤)、レーキ(もしくはクワ)、大きめのじょうろ
これらを積んで、田んぼに移動します。
苗と肥料を田んぼの外に並べる
田植え中も苗を軽トラに乗せっぱなしでは、田植えの効率が悪いです。
田植えの途中で苗を補充できるように、等間隔で田んぼの外に並べていきます。
また、肥料も途中で補充が必要なため、肥料も田んぼの外に置いておきます。
苗に農薬(箱施用剤)を撒く
田植え直前の苗に農薬(箱施用剤)を苗に撒いて水をかけます。
そうすることで、田植え後の稲が有効成分を吸収し、ウンカなどの病害虫に稲を食べられないようにしています。
有効成分は、長期残留しないため、米そのものには影響ありません。
米の収量を減らさないためにも、病害虫の対策をしておきましょう。
田植え機に乗って田んぼに移動する
もし田植え作業を1人で行うならば、一度帰宅して田植え機を持ってこなくてはいけません。
手間になりますが、安全運転で田んぼまで田植え機を移動させましょう。
現在、僕は父・母の3人で田植えをしているため、非常に効率よく準備できます。
いつか1人で田植えをするならば、田植えのやり方をガラッと変える必要があるかもしれないですね。
田植えの回り方の解説
我が家の田植えの工程は大きく分けて次の5つです。
- 内側:田植え機で奥まで移動して苗をセットする
- 内側:奥から順に苗を植えていく
- 外側:田植え機のタイヤ痕をならす
- 外側:苗を植えながら1周する
- 田んぼからバックで出る
最初にも述べたように、田んぼをなるべく平らのままにしておくことが大切です。
そのため、田植え機であちこち走り回るとデコボコが増え、苗の状態に支障が出ます。
いかに田植え機のタイヤ痕を作らないかがポイントなので、それを意識していきましょう!
イメージをつかみやすくするため、田んぼは真四角と仮定して説明しています。
田んぼの形は皆さん千差万別で、全く同じようにはできないと思いますが、ご了承ください。
ご自身の田んぼでアレンジして田植えをしてみてください。
内側:田植え機で奥まで移動して苗をセットする
入口から田植え機で入り、まずは苗を植えずに奥まで進みます。
外側から、田植え機1台分内側に停めて、苗を田植え機にセットします。
苗はセットする前に、水をかけると苗箱から剥がしやすくなります。田植えが進むたびに次の苗にじょうろで水をかけていきましょう。
また、一発肥料も忘れずに田植え機に補充しておいてください。
内側:奥から順に苗を植えていく
苗と肥料がセットできたら、マーカーを下ろして奥から順に苗を植えていきます。
畔に限界まで近づき、田植え機をターンさせます。
ターンするときは、田植え機の後ろ部分は上げておきましょう。
また、ブレーキをうまく使って、できる限り急旋回します。
急旋回後は、後ろ部分を再度下ろし、マーカー線の上を田植え機の中心が通るようにして、まっすぐ田植えをしていきます。
往復するたびに苗が減るので、こまめに苗と肥料を補充するようにしましょう。
アーム付きの田植え機はうらやましいです。アームがあれば、こまめに補充する必要がないですもんね!
これをひたすら繰り返し、畔との距離が田植え機1台分になるまで続けます。
外側:田植え機のタイヤ痕をならす
田植え機が急旋回したところは、タイヤ痕で土がボコボコになっています。
ボコボコになった土はレーキで可能な限り平らにしておきます。
そのままボコボコの状態にしておくと…
水をいれても土がでるため、雑草が生えます。
ジャンボタニシの住処となり繁殖し、稲を食べられるリスクがあります。
土をボコボコにしていて、良いことは1つもないです。
さっとレーキをかけるだけでもいいので、タイヤ痕は残さないようにしましょう!
外側:苗を植えながら1周する
田植え機1台分残していた外側に、苗を植えていきます。
出入口の向きに対して横向きにスタートすると、最後回ってきたときに出入口に向かって進むことができます。
それぞれ曲がるときの手順は次のとおりです。
- 畔までまっすぐ進む。
- 畔ギリギリで止まり、後ろの田植え部分を上げる。
- 少しバックする。
- 前進、直角に曲がり、田植え部分がギリギリ当たらないところまでバックする。
- 後ろの田植え部分を下ろし、苗を植えながら前に進む。
- 出入口まで繰り返す。
これができれば、外側に隙間なく苗を植えることができるはずです。
ギリギリまで植えると、稲刈りでは刈りにくいため、現在は父が改善方法を模索中です。
毎年、試しながら田植えをしている感じですね。
田んぼからバックで出る
最後のストレートで出入口直前まで進んだら、田植えは終了です。
ただ、田植えが終わっても気を抜いてはいけません。
田植え機の前後を入れ替えるようにターンして、バックで出入口から出ていきます。
そうしないと、田植え機ごと後ろに倒れてしまう危険性があるんです。
田植え機は後ろに重心があるため、前進で出ようとするとひっくり返ることがあります。
安全第一で作業しましょう!
田植え後にやるべきこと
田植えが終わった後も、苗が健康に成長するためには適切な管理作業が必要です。
ここでは、ジャンボタニシの防除と田んぼの水管理について詳しく説明します。
ジャンボタニシの防除
植えたばかりの苗は、非常に柔らかく弱い状態にあります。
この頃の苗は、ジャンボタニシにとって格好の餌になってしまうので対策が必要になります。
ジャンボタニシを防除するための殺貝剤を田んぼに撒きます。
我が家ではスクミノン粒剤を利用しています。
強烈なにおいを発するんですよ…
このスクミノンを、外側から投げ込むことで散布します。
これにより、スクミノンを食べたジャンボタニシの一定数を駆除でき、個体数を減らすことができます。
水は少し深めに管理する
水はあえて5~10cmくらいで、初期にしては少し深めにしておきます。
理由は次の2つです。
- ジャンボタニシを活発にさせてスクミノンを食べさせるため
- 苗にとって負担を減らすため
ジャンボタニシを活発にさせてスクミノンを食べさせるため
先ほど解説したジャンボタニシをより防除するためには、少し水を深くしないといけません。
ジャンボタニシは水が浅いと活動しようとせず、スクミノンを食べてくれません。
これでは、ジャンボタニシを防除できないので、あえて水を深くすることで活発にし、スクミノンをバクバク食べてもらい、個体数を減らしていきます。
スクミノンの効果は1週間とされているので、その後は水を5cm以下に浅くしましょう。
苗にとって負担を減らすため
水が浅いと、寒暖差や強風など、外の環境によって苗がダメージを受けることがあります。
それで、苗が枯れてしまったり抜けてしまったりすることがあるので、水はあえて深めにしましょう。
逆に、苗が隠れるくらい深すぎると、光合成もしづらいうえに、土が緩すぎることで、苗が抜けてしまうこともあります。
何事もほどほどが大事ですね!
その後は、稲の生長状況に合わせて、水の深さを管理していきます。
田植えが終わった後にやるべきこと
兼業農家にとって、田植えは年に何度も行うものではないと思います。
毎年忘れずに、次のことを実践しておきましょう!
田植え機を洗う
田植え機はまた来年までお休みしてもらうことになります。
田んぼの泥がついたままでは、錆びと故障の原因になりますので、必ず洗い流しましょう。
キレイにしている農機具は、やっぱり長持ちしますよね。
もし、まだ田植えがあるという場合でも、簡単に水で流しておくといいと思います。
余った苗箱の数を記録しておく
余った苗を記録しておき、来年の苗の購入量を検討しておきましょう。
そうすることで、来年は余分に苗を購入する必要がなくなります。
また余った苗を活用することは、ほぼありませんので廃棄しましょう。
苗の塊を田んぼの隅に置いてあるところもありますが、オススメできません。
理由は、その密集した苗に病害虫が発生するリスクが高まるからです。
無事だったとしても稲刈り時には、ほぼ満足に生長していないため収量の足しになりません。
もったいないですが、余った苗は廃棄した方がいいです。
苗箱の洗浄
苗箱は洗浄して、農協または苗屋に返さなくてはいけません。
苗箱の泥と根っこを除去し、洗ってから返すようにしましょう。
泥と根っこが残ったままでは、来年の播種・苗の育成に支障が出るため、かなり迷惑になります。
1枚1枚を洗うのは手間ですが、頑張ってキレイに洗浄しましょう!
まとめ:全ては安定した稲刈りを迎えるため!
この記事では、安定した収穫を目指すための田植えについて、基本的な知識から具体的な手順、田植え機の回り方など詳しく解説しました。
田植えの状態によって、稲刈りに大きな影響が出ます。
苗が十分に育たず収量が上がらないこと、直線に植えられず稲刈りがスムーズにできないことなど、厄介な状態になってしまうかもしれません。
そうならないためにも、この記事の内容をぜひ実践してみてください。
そして、何より田植えを楽しんでほしいと思います。
ここまで、田起こしや代掻きなどの準備をしていますが、やはり田植えをすると作物を育てる直接的な作業であることに、大変ながらも達成感と喜びを感じることができます。
稲刈りまでの3か月、おいしいお米が育つよう見守っていきましょう。
あなたの稲が何事もなく生長し、立派な稲穂となり収穫ができることを心から願っています。
最後まで読んでくださり、ありがとうございましたー!