【代掻き完全ガイド】初心者・兼業農家向け!ロータリーでのやり方を解説!【回り方の図解あり】
- 代掻きをする理由とメリット
- 上手に代掻きをするための手順とやり方
- トラクターで代掻きをする回り方【図解で説明しています】
稲作をしている人たちにとっては、代掻きの工程は見慣れた風景ですよね。
でも実は「なぜそんなに重要なの?」「代掻きをしなければどうなるの?」「正しい代掻きの方法とは?」といった疑問を持っている人も多いと思います。
正直、僕もそうでした!
実は代掻きの工程は、見た目の単純さとは裏腹に、稲作において豊かな収穫のために非常に重要な役割を果たしているんです。
この記事では、代掻きがなぜ稲作において重要なのか、その具体的なやり方や手順を分かりやすく解説します。
では代掻きの全体像を理解していきましょう!
そもそも代掻きとは何?なぜするの?
代掻きは、稲作の初期段階で、田んぼの土を均一にし、水分を管理するための工程です。
田んぼの土を十分にウォーミングアップすることで、しっかりと稲を成長させ、収穫するために不可欠な作業なんです。
主にやることは、田んぼに水を張って、トラクターなどの農機具を使って土をかき混ぜ、平らにします。
こう聞くと簡単そうに感じますが、あなどってはいけないんです!
稲が上手く育つかどうか、代掻きにかかっていると言っても過言ではありません。
なぜこんなに代掻きが大切かと言うと、次のメリットがあるからです!
代掻きのメリット
水はけが良くなり、そして苗が根を張りやすい環境が整います。
場所によって稲が乾燥や水没する可能性が低くなる。
水深が深いところを無くし、ジャンボタニシの活動を鈍くして繁殖しづらくさせる。
土が動かされ、さらに土の上から全体に水を被るため雑草が生えにくくなる。
土をかき混ぜることで、養分が土壌全体に均等に行き渡り、苗が必要な栄養を得られるようになる。
などなど、とてつもないメリットですよね!
苗は稲の赤ちゃんです。
そして代掻き後の土は、赤ちゃんを元気に育てるためのベッドです。
代掻きのやり方次第で、ベッドのランクが変わってしまい、赤ちゃんの育ち具合に影響が出てしまいます。
なので代掻きの手を抜いたり、怠ったりすると…
苗の根が張りにくく、乾燥や水没する稲が出てきて、ジャンボタニシに苗を食べられ、雑草が生えて、苗に栄養が行き渡らない田んぼになってしまうんです。
考えただけで恐ろしいですね…
大切な作業だからこそ、デメリット(注意点)もお伝えします。
代掻きのデメリット(注意点)
代掻きは低速で行わないと効果がほぼないので、手間と時間がかかります。
効率的に代掻きをするにはトラクターなどの専門的な農機具が必要なため、購入また維持の費用がかかります。
高速での代掻きや、足跡を大量に残すなどをすると、土壌を乱してしまい、稲の成長に悪影響の可能性があります。
代掻きは田植えの2~7日前に行います。
兼業農家であれば、本業の休みの日のタイミングを見計らって、代掻きと田植えのタイミングを考える必要があります。
以上が代掻きのデメリットであり、注意点です。
トラクターのコストはどうしても避けられませんね。
大事な代掻きの手順や日程の判断は、以下の内容を参考にしてください!
代掻きをするまでの手順
実際に代掻きをする場合に何からすればいいのか、その手順を解説します。
代掻きは、田植え前の土の最終仕上げなので、確実に進めていきましょう!
田起こしを数回しておく
(稲刈り後~代掻き1か月前まで)
代掻きまでに、田起こしなどの耕す作業をしていなければ、土が固く効果が得られません。
6月頃までを目安に2~3回程度田起こしをして、田んぼの土を耕して柔らかくしましょう。
農機具の準備・確認
(代掻きまでに)
代掻きを行う前に、トラクターの調整をしておきましょう。
ロータリー(トラクター後ろの刃が回る部分)のフラップと呼ばれる整地板を上の方に調整します。
代掻きでは浅めに土をかき混ぜ、その土を均一にしていくためです。
また、レーキやクワなどの用意をしておく必要があります。
トラクターの轍が深いところや足跡は、機械でなく自力で可能な限り均一にする必要があります。
水量の管理
(代掻きの3~7日前)
代掻きの前に、田んぼに水を入れておきます。
水深は平均1~2cmが目安ですが、代掻き前はたいていデコボコなので分かりにくいです…
そこで、見た目の目安として、土が8割・水が2割見える程度の水量にしておきましょう。
そうすると、上手くいけば代掻き直後の水深が1~2cm程度になる可能性が高いです。
水の量は、この時点ではおおよその感覚で大丈夫です。
代掻き後に調整できるのでご安心ください。
また、もし代掻き直前に雨が多そうなら、水量が増えるので少しだけ水深を下げておいた方がいいですね。
トラクターの速度などの調整
(代掻き開始直前)
トラクターの進行速度は2~4 km/hが目安です。
我が家のトラクターの場合は、
主変速1速で、回転数2,500rpmくらいです。
もし速すぎると、あまり掻き混ぜれずに代掻きの効果がないまま終わってしまいます。
また、爪の回転速度のPTOは2速くらいがちょうどいいです。(機械によるかもですが)
速すぎると今度は、土が柔らかくなりすぎて、田植えの苗が立たずに流されてしまいます。
トラクターが田んぼに入ったら、進行速度と回転速度PTOを上記のような適切な状態に調整しておきましょう。
また、ロータリーの深さは代掻き用に浅めにしておきましょう。
刃が15cm程度出ていて、土がかき混ぜられていれば深さは十分です。
コースを計画して代掻きしていく
(代掻き開始)
無計画にトラクターがあっちこっちを走ると田んぼを均一に整えられません。
トラクターが進んでいくコースを、おおまかに決めて代掻きをする必要があります。
コースは様々な例があるので、どれが正解ってことはないですよ。
本記事では一例として我が家のコースを紹介しますね。
代掻きの回り方の解説
我が家の代掻きの工程は大きく分けて次の5つです。
- 土の高いところがあれば移動させる
- 外側:畔近くを踏み固める(図1)
- 内側:ヨコ向きに代掻きする(図2~3)
- 内側:タテ向きに代掻きする(図4~5)
- 外側:3周代掻きする(図6~9)
正直全てやるのは手間ですが、これだけやればかなりキレイになります。
代掻きが最重要作業だからこそ、以下の回り方をぜひ参考にしてみてください!
イメージをつかみやすくするため、田んぼは真四角と仮定して説明しています。田んぼの形は皆さん千差万別で、全く同じようにはできないと思いますが、ご了承ください。ご自身の田んぼでアレンジして代掻きしてみてください。
①土の高いところがあれば移動させる
代掻き前に水を入れていると、土の高いところは一目瞭然です。
水に浸からず、土のまま露出している部分が広い場合、土を寄せて移動させる必要があります。
土を寄せないと、代掻き後その部分だけ水に浸からず、雑草が生えたり、虫が出たりするため大変なことになります。
土が多少デコボコして見えている程度なら問題ありません。
そのくらいなら代掻きすればキレイに平らになります。
土の寄せ方、移動の仕方
まず、土が高いところにロータリーを下ろします。
ロータリーを回転させず、そのまま土を寄せながら内側の方へ寄せます。
ロータリーを上げて、土が高いところまでバック。
周囲と違和感がなくなるまで、ひたすら繰り返したら土の移動は完了です。
②外側:畔近くを踏み固める
侵入口から入り、まずはトラクターの調整、土の移動をします。
その後、ロータリーを下ろさず、代掻きをせずに田んぼの外側ギリギリを一周します。
タイヤで田んぼと畔の境目を踏み固めていくんです。
踏み固めることで、土の変な盛り上がりを防いだり、水を抜けにくくしたりする効果があります。
上の写真のように、かなりギリギリを攻めてください。
我が家の田んぼでコンクリ壁の畔もありますが、わずかにタイヤを擦りながら一周します。
③内側:ヨコ向きに代掻きする
ここからようやく代掻きが始まります。
代掻きをしながら前後に往復を繰り返します。
奥まで進んで畔の手前5mから、ロータリーを上げてトラクターをターンします。
このとき、すぐ隣の列を代掻きしようとすると、ターンが難しいためオススメしません。
あえて、0.5~1列ほどの間を空けてターンしましょう。
そうすれば、難しいターンも切り返しも必要ありません。
空けた間は奥まで行ってから、戻りながら代掻きします。
図3のとおりですが、戻るときの最初のターンは間を1つ飛ばしてターンしましょう。
理由は、さっき同様にターンが厳しすぎるからです。
順序良くターンすれば、切り返しは必要なくスイスイ代掻きできます。
④内側:タテ向きに代掻きする
まだ代掻きやるんかい!って感じですよね。
やるんです!やるしかないでしょう!
正直、ヨコ向きだけでも十分に代掻きで来ていると思います。
ですが、代掻きはお米の出来や、その後の管理につながる最重要作業。
手は抜けません。すでにキレイな田んぼをさらにタテ向きに代掻きします。
時間に余裕がない場合は、タテ向きの省略も仕方ないと思います。
僕自身も今後、代掻きに時間が取れない時は、省略を検討する必要があると考えています。
ヨコ向きとやり方は同じです。
ヨコ向き時のトラクターの轍を代掻きしてきたら、そこが最後の1列です。
これで内側の代掻きは終わり、最後の仕上げの外側に移ります。
⑤外側:3周代掻きする
一番外側を代掻きしますが、ここは安全第一です。
この時は、ロータリーをギリギリまで外側にしてはいけません。
畔やコンクリ壁にロータリーが接触すると破損する可能性があります。要注意!
足の幅くらいの余裕があってOKです。
往復時に切り返しをしている箇所を整地することが目的です。
そのため、残っているタイヤ痕や轍さえキレイに代掻きできてしまえば完璧です。
外側の角で曲がるときは、切り返しが必要です。
奥まで進み、曲がった後、一番後ろまでバックして代掻きを再開します。
この繰り返しで一周します。
2週目は少し内を代掻きします。
1番外側は代掻きが済んでいるので、もう踏まないようにしましょう。
最後にどれだけタイヤ痕を残さないかが勝負です。
最後の1周で、すべてのタイヤ痕を消すことを目指しましょう。
そうすれば、全体がかなり平らに代掻きができている状態のはずです。
タイヤ痕が消しきれなくて、どうしても気になる場合はもう1周いきましょう!
正直、さすがにそこまでしなくてもいい気はしますが…
あとは出るだけです。
出口ギリギリまで代掻きをして、ロータリーを上げて、そのまま田んぼから出ましょう。
エンジンを切って、だいたいの泥を落としておきます。
この泥が道に落ちてしまうと迷惑になるので、必ずここで大きな泥を落としましょう!
これで田んぼの99%は整地がされている状態になったはずです。
残りの1%はどうするの?って思いましたよね。
そう!手作業です!
代掻き後の手順
手作業で足跡やトラクター跡を埋める
(トラクターの代掻き後)
ここまできて手作業か…、と思うかもしれませんがコレが最後なので頑張りましょう!
手作業で埋めなければ、その跡はジャンボタニシの繁殖場となってしまうかもしれません。
それはイヤですよね!
どうしても外側の方は足跡やトラクター跡で均一にならず残りがちです。
跡がひどい箇所があれば、レーキやクワで整地していきましょう!
完全に整地することは難しいですが、デコボコが解消されれば十分だと思います。
ぐるっと外周を手作業で整地ができれば、代掻き完了です!
トラクターのロータリー付近の細かい泥を洗い落とす
(帰宅後)
手作業で最後と言ったじゃないか!と思いますよね。
すみません。まだありました。
トラクターのロータリーについている細かい泥は水で落としておきましょう。
稲作のみの場合、しばらくトラクターは使わないので、放っておくとサビてしまい故障の原因になります。
手間がかかりますが泥を落とし、トラクターをキレイにして完全終了です!
お疲れさまでした!
代掻きの前と後で確認しておくこと
ここまでは代掻きの作業や技術的な説明をしてきました。
他にも代掻きに関係する確認すべきことがあります。
代掻きの時、肥料や除草剤はどうする?
これは正直、地域や所持している機械によって回答が変わってきます。
それぞれ説明します。
必ず地域の近隣農家に聞く
肥料や除草剤をどのように使用しているか、近隣農家さんに聞いたり相談したりしておくことをオススメします。
なぜなら、地域によって用水路の環境や、有機の取り組み、品種による作業時期などが全く違うからです。
相談したうえで、あなたは肥料や除草剤を使用するのか、また使用するなら種類はどうするのか近隣農家さんに情報共有しておきましょう。
相談せずに勝手にやってしまって、肥料や除草剤が他人の田んぼに流れてしまうとトラブルに繋がる可能性があります。
農業をする上で地域との繋がりはとても大切ですよね!
お互いのトラブルを避けることはもちろん、情報を共有できる重要なコミュニティになります!
トラクターや田植え機に散布機能があるか
所持しているトラクターや田植え機に、肥料や除草剤を散布する機能やアタッチメントはありますか?
トラクターで代掻き時に肥料・除草剤を散布しても、田植え機で肥料・除草剤を散布してもどちらでもOKです。
散布機能がある機械を使用するタイミングで散布しましょう。
ちなみに我が家は、田植え機で肥料・除草剤を散布しています。
多くの兼業農家は代掻きから田植えまで1週間の間が空くので、散布タイミングに適した肥料や除草剤を使用することをオススメします。
代掻きまでに田起こしは十分できているか
我が家の場合だと、2月から2回の田起こしをして土を仕上げています。
地域や各農家さんによって、時期や回数は違うと思います。
1回でも十分耕せていることもあります。
なので「○月に△回するべき!」とまでは言い切れません。
ただ、稲作は「準備が9割」と聞いたことがあります。
田起こし・代掻きが米の出来を左右する大切な作業だと思います。
事前にどれくらいやるのか確認しておきましょう。
代掻きから収穫までのスケジュールが決まってくる!
これから田植えをして、約3か月後の秋にはコンバインで収穫になります。
この代掻きでスケジュールが狂うと、収穫の日程まで影響を受ける可能性があります。
なので、ちょっとやそっとで予定日は変えられません。
兼業農家であれば、有給を取る必要が出てくるかもしれませんね。
僕も有休を使いながら、田植えや稲刈りをしています。涙
ならば、代掻きや収穫の日程の目安が定まったなら、やるしかありません。
雨天でも代掻きを遂行するんです!
そのため、あなた自身のスケジュールやトラクターの状態など、事前に確認できることは済ましておきましょう!
田植え機はいつでもいける状態ですか?
代掻きが終わったら、稲苗と田植え機を用意して、田植えに備えましょう!
田植え機も問題なく使用できるか、確認をしておいた方がいいです。
田植え機は年に1回しか活躍しないため、なるべく早めに確認しておかないと少し不安です。
直前で田植え機が動かないことが発覚したらと思うと恐ろしいですよね。
一度、田植え機は動かしてみておきましょう!
まとめ:【準備が9割】代掻きは稲作の準備総仕上げ!
代掻きのメリット・デメリット、手順ややり方などについて解説しました。
代掻きは最重要作業と言ってもいいほど、稲の生育状況に関わってきます。
そのため、よく分からないままに作業をしてしまったり、適当に済ませてしまったりすると、収穫量が減少する可能性があります。
それくらい代掻きは大切なんです。
僕も最近になってその重要性を知ったんですが。
田植え前の水を張った田んぼをみると「いよいよだなー」と思います。
苗を植える前の田んぼってキレイですよね。
あなたの田んぼは、そう思える状態までしっかり準備ができそうですか?
代掻きは田植えまでの総仕上げです。
稲がすくすく育てられるような、そんな土に仕上げていきましょう!
読んでくださり、ありがとうございました!