【ウンカ対策】坪枯れやウイルスの被害から稲を守る!米農家のための予防・駆除ガイド!
- ウンカによってどんな被害を受けるのか
- どんな防除対策をすればいいのか
- ウンカを早期発見するためのコツ
ウンカは私たち米農家にとって大きな脅威です。
初めてウンカの被害を目の当たりにしたとき、稲が立ち枯れ、収穫が激減する光景はショックだったと父から聞きました。
どの米農家の方でも、このような悲劇は起きてほしくないと考えています。
この記事では、ウンカの基本情報から被害症状、効果的な防除方法、そして具体的な対策までを詳しく解説しています。
ウンカの被害に悩む米農家の方が少しでも安心できるよう、実践的な情報をお届けします。
それでは、一緒にウンカ対策を学んでいきましょう!
代表的なウンカの種類は次の3つ!
ウンカは米に被害を与える小さな害虫で、次の3つが代表的な種類です。
代表的なものには、トビイロウンカ、セジロウンカ、ヒメトビウンカがあります。
トビイロウンカ
トビイロウンカは、秋に見られることが多く「秋ウンカ」と呼ばれます。
稲の茎から樹液を吸い取ることで植物の成長を阻害し、大量発生すると田んぼの一部の稲が枯死する「坪枯れ」を引き起こすことがあります。
成虫は茶色で、約3.5-4.5mmの大きさがあり、飛行能力の高い翅(はね)を持っています。
若虫は白っぽい色から徐々に茶色に変わります。
トビイロウンカは日本全国で見られますが、特に温暖な地域での発生が多いです。
九州、四国、本州の温暖な沿岸部や稲作が盛んな地域でよく発生します。
セジロウンカ
セジロウンカは、夏に見られることが多く「夏ウンカ」と呼ばれます。
セジロウンカはウイルス病の媒介者であり、主にイネ南方黒すじ萎縮病の感染を広げて被害が大きくなります。
成虫は背中と翅(はね)が白く、約3.0-4.0mmの大きさで飛行能力があります。
若虫は薄い色から徐々に背中が白くなります。
セジロウンカも日本全国に分布しています。
特に温暖で湿度の高い地域での発生が多く、九州、四国、本州の温暖な沿岸部や稲作地帯で頻繁に見られます。
ヒメトビウンカ
ヒメトビウンカもウイルスの媒介者であり、イネ絹葉枯病の感染を広げる恐れがあります。
この3種類ではヒメトビウンカのみ越冬します。(トビイロウンカ・セジロウンカは大陸から飛来)
成虫は小さく、約3.0mmの大きさで、茶色や灰色の翅(はね)を持っています。
若虫は薄い色から徐々に茶色に変わります。
ヒメトビウンカは日本全国に広く分布しています。
越冬できるため比較的寒冷な地域でも見られ、北海道から九州まで幅広い地域で発生します。
ウンカの被害で稲が枯れてしまう…
ウンカが稲に与える被害は主に以下の3つです。
- 坪枯れ
- ウイルス病の感染
- 生育阻害
坪枯れ
坪枯れは、主にトビイロウンカの大量発生によって引き起こされます。
大量のトビイロウンカが稲の茎から樹液を吸い、茎が徐々に弱くなり、ついには立ち上れなくなります。
最終的には、田んぼの一部の稲が枯死してしまい、収穫が大幅に減少します。
過去に坪枯れの被害がでた時、父はかなりショックを受けたそうです…
ウイルス病の感染
ウンカが稲の茎から汁を吸う際に、ウイルスを媒介することで被害を大きくしていきます。
イネ南方黒すじ萎縮病
稲の株がしおれてしまったり、葉先がねじれたりして、稲が十分に生育されなくなってしまいます。
主にセジロウンカがウイルスを媒介します。
イネ縞葉枯病
稲の生育初期に発症し、と呼ばれる新葉が黄白色に褪色してこより状に巻き、弓状に垂れ下がる「ゆうれい症状」が見られます。
その後、分けつが少なくなり稲は枯死してしまいます。
主にヒメトビウンカがウイルスを媒介します。
生育阻害
ウンカが稲の成長に必要な汁を吸い取ることで、稲の発育が遅れたり、実がつかなくなったりします。
これにより、収穫量が大幅に減少したり、品質が低下したりします。
さらに、ウンカが大量発生してしまうと、坪枯れやウイルス感染拡大が起きて、被害が大きくなってしまいます。
効果的な防除方法は?
以上の被害を考えただけでもゾッとしますよね…
もちろん、被害を受けないように対策することはできます!
ここでは、次の3つの防除方法について説明します。
- 農薬
- 水の管理
- 過密な田植えは禁物
ウンカは大陸から飛来するという外的要因の影響が大きく、その年によって危険度が変わります。
そのため、たいしてウンカの心配がない年もあるかもしれません。
ですが、他の病害虫にも効果があるので、下記の基本的な防除は実施することを強くオススメします。
農薬の使用
農薬の使用は、ウンカ対策において最も一般的な防除方法です。
農薬を使用するタイミングは、大きく分けて2回。
- 田植え直前に、稲の苗が苗箱に入った状態で箱施用剤(予防)
- ウンカ発生後に、対象のウンカ・時期に合わせて本田施用剤(駆除)
田植え直前に箱施用剤(予防)
箱施用剤を呼ばれる農薬を、田植え直前の苗箱に振り、水をかけます。
そうすることで、田植え後の稲が有効成分を吸収し、ウンカなどの病害虫に稲を食べられないようにしています。
有効成分は、長期残留しないため、米そのものには影響ありません。ご安心ください。
ただ、長期残留しないということは、効果が長続きしないとも言えます。
ウンカの飛来・発生が少なければ、箱施用剤だけで十分に防除できます。
ウンカ発生後に本田施用剤(駆除)
数匹~数十匹のウンカが、稲に張り付いていたら本田施用剤を検討する必要があります。
散布機や噴霧器を使って農薬を撒くため、手間がかかります。
ウンカの種類や持っている機材を確認して、近隣のベテラン農家さんに相談してみましょう。
おそらくウンカは他の田んぼでも発生しているため、どの農薬をどの時期にどうやって撒くかアドバイスをくれるはずです。
ただし、夏の終わり、すでにウンカの被害が表れていたら、残念ながら効き目はほぼありません。
そのためにも、早めにウンカの発生に気付くことが重要ですね!
こまめに稲の様子を見るようにしておきましょう!
水の管理
ウンカは湿度が高い環境を好むため、水の管理も気を付ける必要があります。
常に水を張ったままだと湿度が高くなってしまいます。
そのため、2~3日は水を抜いて(落水)、また2~3日は水を入れて(入水・潅水)、稲付近の湿度が上がりすぎないように管理しましょう。
ウンカにとっての好環境にしないことが大切ですね!
ウンカなど湿気を好む病害虫には、大きな防除の効果があります。
過密な田植えは禁物
田植え機を使っているため、苗が過密になっていることは少ないと思います。
ですが、わざわざ農家自身が過密な苗の状況を作ってしまうことが多いんです。
それは、「田植えで余った苗を、田んぼの隅っこに置いている」からです。
見かけたことありますよね?
苗箱から出して、そのままの過密な状態で、田んぼの隅っこに置いている、あの苗たちです。
田植えで、苗の数がぴったりなくなることは全くと言っていいほどありません。
多少の余裕をもって苗を用意するため、苗が余りますよね。
その苗を田んぼの隅っこに植えてしまうと、稲が過密状態になり病害虫が発生するリスクが高まります。
しかも、無事育ったとしても、その稲からたいした米も取れません。
余った苗は廃棄です…っ!
「苗がもったいない」という気持ちは分かります。僕もそうです。
ただ、ウンカが発生するかもしれない、というリスクと割に合わないですよね。
過密状態の稲になってしまうため、残念ですが余った苗は廃棄しましょう!
ウンカの早期発見がカギ!定期的に田んぼ観察!
水の管理や稲の生長を見るために、田んぼに定期的に観察しますよね。
その時、ウンカが発生していないか、被害が出ていないか確認をしましょう。
そうすることで、ウンカの早期発見につながります。
観察するポイントは次の4つです。
- 稲の株本にウンカがいないか
- 葉に黄色い斑点が現れていないか
- 茎に異常な色の変化が見られないか
- 稲の成長が遅れていないか
これらの状態が観察されたら、ウンカが繁殖を始めている可能性が高いです。
ウンカによるウイルスの拡散や、坪枯れが起きてしまうと止めることはできません。
早期発見がウンカ防除のカギになるんです。
田んぼの稲をいくつかよく観察しましょう。
もし広範囲に確認されたら、他の農家さんたちに相談したうえで、農薬(本田施用剤)の使用を検討する必要があります。
まとめ:ウンカが住みにくい環境を作っていこう!
ウンカは、大陸からの飛来といった外的要因の影響を受けるため、農家自身の行動で必ずしも対策ができるわけではありません。
残念ながら、どれだけ対策しても被害を受ける可能性はあります。
とんでもない数のウンカが飛来したら、避けようがないですもんね…
ですが、ウンカも生物である以上、住みにくい環境では居つく可能性は下がります。
基本的な防除を徹底することで、ウンカを住まわせないようにしていきましょう!
そうすればきっとウンカに泣かされることはないはずです。
特に坪枯れは被害が大きく、さらに収穫前に起きるため精神的なダメージはかなり大きいです。
米を生産している同志にそのような状況になってほしくありません!
もちろん自分もそんな悲しい思いはしたくありません!
ウンカの住みにくい環境が、僕たちの米を守ってくれると信じて、お互い米作りに励んでいきましょう!
読んでくださり、ありがとうございましたー!